夢恋桜

ジェシーのSixTONESが好きです

全部が終わったら教えます

私はゆいちゃんではないし、ゆいちゃんにはなれないけど、「全部が終わった」ので、舞台「スタンディングオベーション」の感想をつらつらと「教えます」。

 

ジョージ2世と鳴島誠也くん

公式HP、事前番組、雑誌・・・そのどこでも言われていたのが、この作品が「劇中劇」であるということ。ジェシーくんは「スタンディングオベーション」の舞台の中で、「ジョージ2世」という舞台の中で主役の「ジョージ2世」を演じる鳴島誠也くんを演じる(文字にすると非常にややこしい)。誠也くんは舞台裏でこの75歳のジョージ2世を演じることの難しさを嘆いていた。それでも、ベテラン役者に「集中力が足りない」と怒られながらも、演出助手のゆいちゃんに「見せてくださいよ!アイドルとか本当は何歳だとか、そんな余計なこと全部忘れさせてくれる国王ジョージ2世を!」と叱られながらも、自分なりのジョージ2世を考えて演じていく。確かに最初はセリフは噛むし、客席に入り込んだ刑事に気を取られセリフを飛ばすし散々な出来だった。だけど2幕からは違った。少し自信がなさげな様子から、座っていた王座が180度回転すると、そこには75歳の国王がいた。父親が有名な役者だった、2世としての想いが乗せられていた。

父親のようにはなりたくないと言いつつ、実の息子に背かれるジョージ2世、反発していた父親は病死し、もう二度と会うことができない誠也くん、そして分かり合えず父親を刺し殺してしまった犯人。皆それぞれの環境で同じように父親との葛藤を抱えている。始まる前はこんなに深い話だなんて思っていなかった。犯人を逮捕するだけのドタバタコメディだと思っていた。

ジョージ2世も誠也くんも犯人も、もう二度と父親に会うことはできない。でも唯一父親の立場でもあるジョージ2世だけは、息子に会うことができる。だから、ジョージ2世のあの最後の許すシーンで、きっと全員救われた。誠也くんがもしも犯人と同じような葛藤を抱いていなければ、あのアドリブは出てこないし、犯人はきっとフレディと同じように自害していたと思う。同じ境遇にいた誠也くんだからこそできた演技だった。きっと大場さんもそんな演技が見たくて、息子である誠也くんを「主役にしてくれ」と吉川さんに頼んだんだと思う。「アドリブが嫌いだ」と語り、誠也くんの父親と決別するきっかけとなったのが千秋楽のアドリブだという話を聞いた後に見る、木場さん演じる大場さんの千秋楽のアドリブ、本当に粋だった。

 

鳴島誠也くんとジェシーくん

主役のジョージ2世を演じる鳴島誠也くんは、当て書きの部分とそうじゃない部分の塩梅が絶妙だった。中でも刺さったのは彼が人気絶頂アイドルであり、初舞台でいきなりの主役に不安を抱えていること。

誠也くんは自分が主役に選ばれたのは、自分が大手事務所に所属していてかつマネージャーが「主役じゃなきゃやらない」とごねたからだと思っており、みんなの前ではふざけて「人気絶頂アイドル」なんて自己紹介をするけれど、歳の近い演出助手のゆいちゃんにだけは不安な気持ちを吐露する。そんなアンバランスさが、鳴島誠也くんの魅力であり、ジェシーくんに重なる部分だった。

今でこそ、大御所の前で一発ギャグを披露したりするけれど、胸キュンセリフを言うのに照れる姿や、儚い表情をしながらステージで歌う姿もジェシーくんなんだと思う。ジェシーくんの魅力の1つであるギャップが、鳴島誠也くんにも投影されていた。

実際雑誌では何度も「不安だ」と言っていたし、メンバーからも「弱音を吐いている」「追い込まれている」と言われていたし、「力をつけてから主役を張りたかった」と嘆く誠也くんのセリフにはジェシーくんの感情が込められているような気がして、毎公演ほんの少し苦しかった。

 

同じ嘆くシーンで「だってアイドルだし」と自分を卑下するような一言も、誠也くんの言葉ではなく、ジェシーくんの言葉だと思って聞いていた。誠也くんは舞台そのものや役者としての自分ではなく、アイドルとしての自分を観る人で、あの広い劇場の客席が埋まっていることをわかっていて、舞台慣れしていない自分のファンが団扇やサイリウムでアピールすることをやや冷笑している。(実際に団扇やサイリウムを振る人は流石にいなかったけど)

私自身アイドルとしてのジェシーくんが好きで観に行ったうちの一人だったので、ごめんねという気持ちになったし、寺脇さんとくるみちゃんの「どうやってこのプレミアムチケットを手に入れたんだろう」のくだりは本当にブラックジョークだなと思ってた。

だから、アイドルとしての誠也くんを観にきた人に向けた、舞踏会でのダンスシーンやミュージカルシーンは嬉しかったし、いつもすごく楽しみにしていた好きな場面の1つだけど、喜べば喜ぶほど、「アイドルとしての」ジェシーくんを観に来た自分に気づく皮肉。

確かにジェシーくんがアイドルではなく役者だったとしたら、出会えていなかったかもしれないし、好きにならなかったかもしれない。そうしたらこの舞台もきっと観に来ていない。でもアイドルのジェシーくんがこの舞台をやってくれたから、私はこの作品に出会えた。それって何か間違ってるのかな。

 

ジェシーくん、改めて40公演完走おめでとう。終わったあと「自信がついた」と言っていたのが本当に嬉しかった。「アイドルだから」とか「主役なんて」と嘆く気持ち、少しは減ったかな。ジェシーくんのファン以外の方もたくさん観に来ていたし、そういうジェシーくんのことを知らない人に好きになってもらえるかどうかが課題だと何度か雑誌で見かけた。実際「ジェシーくんってスタイルいいのね」「歌うまいのね」という声を聞いたので大成功だったと思う。

終わってみて、私は役者としてのジェシーくんもちゃんと好きになってた。もちろんアイドルのジェシーくんが好きなんだけれど、好きになったきっかけはそもそもドラマの中のジェシーくんだったわけで、演技をするジェシーくんが好きじゃないわけなかった。もちろんスタンディングオベーションの舞台そのものだって大好きになってた。カンパニーの皆さんが連日SNSでマスカラのことを取り上げてくれたり、劇中でアドリブとしてマスカラの話をしてくれたり。千秋楽の挨拶だってそう。ジェシーくんがみんなに愛されていることが伝わってきて本当に嬉しかった。

 

初のドラマ出演、初の映画出演、初の外部舞台主演のそのどれもに秋元さんが関わっているの、人生まさかの連続だよなあ。拳を交わすあのシーンはバカレアだと思っていいですか。

 

全部は観に行けなかったけど、できる限り会場に足を運んだ。このご時世、自分のやっていることが正しいのかわからなくなったけど、それでも幕が上がる限り、体調が許す限り、私はジェシーくんが挑む夏を見届けたい、そんな気持ちでいっぱいだった。人生で多分同じ作品をこんなに見ることはもうきっとないんだと思う。終わってしまったことが、なかなか受け入れられなくて、でもこの夏の私の気持ちをできるだけ残しておきたくて。最後に一番言いたかったことを。

 

ジェシーくん、75歳の国王にちゃんと見えていたよ」